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暦年贈与、対象範囲や注意点
カテゴリー:スタッフブログ
2023年度税制改正により、贈与に関する条件が厳しくなり、過度な節税を防ぐために新しいルールが導入されました。
■暦年贈与とは?
暦年贈与とは、1年間(1月1日~12月31日)の贈与が110万円以下の基礎控除以下だった場合、贈与税がかからない仕組みを利用した贈与方法です。年間110万円の贈与を10年間続けると、1100万円が非課税となり、贈与税の申告も必要ありません。
なお、110万円を超える贈与の場合、贈与額に応じて税率10~55%の贈与税が課税されます。不動産などの高額財産を贈与するときは税負担を避けられませんが、預貯金や株式を分割して渡したいときは暦年贈与が向いているでしょう。
■暦年贈与の活用が推奨されるケース
暦年贈与は少しずつ財産を移転させたい方や、贈与する相手(受贈者)が複数いる方に適しています。以下のようなケースは暦年贈与による節税効果が高いでしょう。
◎暦年贈与する相手が複数いる場合
暦年贈与の基礎控除は受贈者ごとに適用できるので、3人に110万円ずつ贈与した場合は330万円が非課税になります。
仮に、配偶者と3人の子供、6人の孫がいる場合、贈与の対象者は10人になるので、それぞれに110万円ずつ渡すと合計1100万円の非課税贈与も可能です。贈与と同時に相続財産も1100万円減少するため、十分な節税対策といえるでしょう。
◎贈与者の年齢が若い場合
暦年贈与は長期間でコツコツ贈与するケースに向いています。贈与者の年齢が若ければ若いほど贈与機関も長くなるので1回の贈与が少額であっても、長期間続けると1000万円や2000万円の財産でも非課税贈与できるでしょう。
■暦年贈与をする流れ
暦年贈与で財産を渡すときは、以下の流れで対応してください。税務署に認められなかった贈与は相続財産にカウントされますので、贈与の証拠が残るようにしておきましょう。
①贈与契約書を作成する
暦年贈与するときは、以下の内容を盛り込んだ贈与契約書を2部作成し、贈与者と受贈者で取り交わしましょう。
表題:贈与契約書
贈与する財産と金額
贈与方法
贈与契約の締結日
贈与者と受贈者の住所・氏名及び捺印
贈与契約書はパソコン作成でも構いませんが、双方の合意があったことを確実にするため、住所・氏名は本人自筆とし、実印を使って捺印しておきましょう。印鑑証明書を添付すると実印であることを証明できます。
なお、贈与契約書を公正役場に提出すると、確定日付のスタンプを押してもらえます。700円の手数料はかかりますが、贈与契約の取り交わしを法的にも証明したい方は利用してみましょう。
②贈与には金融機関の振り込みを利用する
暦年贈与は税務署の調査対象になりやすいので、現金を贈与する時は必ず金融機関の振り込みを利用することをおすすめします。振り込みを利用すると、誰から誰に・いつ・いくら贈与されたか証明できるので、ATMやネットで送金をした場合は早めに通帳へ記帳しておきましょう。
また、贈与契約の締結日と振り込みは同一日、またはできるだけ近い日付にしてください。
③贈与が110万円を超える時は贈与税申告を行う
暦年贈与が基礎控除を超える場合、110万円を超過した部分について贈与税申告と納税が必要になります。贈与税は贈与があった年の翌年2月1日から3月15日の間に申告・納税するので、期限を経過しないように注意してください。
なお、贈与税の税率は国税庁ホームページに掲載されており、18歳以上の子供や孫が直系の祖父母や父母から贈与を受ける場合、特例税率を適用できます。ただし、贈与があった年の1月1日時点において、子供や孫が18歳以上になっている必要があります。
■暦年贈与と併用できる控除・特例
暦年贈与は以下の控除・特例と併用できるので、基礎控除110万円に特別控除額を加算した額までが非課税となります。配偶者や子供、孫へ贈与する予定がある方は活用してみましょう。
◎教育資金の一括贈与の特例
教育資金の一括贈与の特例とは、祖父母や父母が30歳未満の子供や孫に教育資金を贈与する場合、1500万円まで非課税になる制度です。学校に支払う入学金や授業料などが非課税対象になりますが、塾や習い事の場合は500万円まで贈与税がかかりません。
教育資金の一括贈与の特例は2023年3月末で終了する予定でしたが、税制改正によって2026年3月31日まで延長されることになりました。なお、贈与する場合は専用口座が必要となり、受贈者が30歳に達した時点の残高には贈与税がかかるので注意してください。
◎住宅取得資金贈与の特例
祖父母や父母が直系の子供や孫へ住宅取得資金を贈与する場合、一定要件を満たせば最大1000万円、その他の住宅は500万円まで非課税になるので、マイホーム資金を支援する時には活用したい制度です。住宅取得資金贈与の特例は本来令和5年12月31日にする予定でした。
しかし、この制度を3年間延長することになりましたので、住宅購入の今がチャンスです!!
◎結婚・子育て資金の一括贈与の特例
18歳以上50歳未満の子供や孫へ祖父母や父母が贈与する場合、結婚・子育て資金の支援が目的であれば最大1000万円が非課税となります。特例の対象は結婚1年前からの支払いとなる結婚式費用、引越し費用や子供の保育料・医療費などになっており、2025年3月31日まで利用できる制度です。
教育資金の一括贈与の特例と同じく、金融機関に専用口座を開設する必要があり、受贈者が50歳に達した時点の残高には贈与税がかかるので注意しましょう。
◎贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用財産、または居住用財産の購入資金を贈与する場合、2000万円まで贈与税はかかりません。
なお、相続発生時には以下の特例も適用できます。
・配偶者の税額軽減:1憶6000万円または法定相続分のどちらか多い方まで非課税となる措置
・小規模宅地等の特例:自宅の敷地330㎡までが80%の評価減になる特例
贈与税の配偶者控除については、相続発生後も配偶者の住まいを確保しておきたいときに活用するとよいでしょう。
■暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できない
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母が18歳以上の子供や孫に贈与する場合、2500万円までを非課税とする制度ですが、暦年贈与との併用はできません。
相続時精算課税制度を利用した場合、翌年以降は1円の贈与であっても申告が必要となり、暦年贈与に戻すことはできないので注意してください。
なお、相続時精算課税制度による贈与はすべて相続財産に加算するため、この制度の贈与者が亡くなった場合には相続税の課税対象になります。2500万円を超える部分は一律20%の贈与税率が適用されるので、まとまった財産を贈与したいときには適しているでしょう。
■暦年贈与を行う時の注意点
暦年贈与で子供や孫などに財産を移させる場合、以下の点に注意してください。場合によっては贈与税の負担が重くなり、相続税の節税効果も低くなってしまう可能性があります。
◎連年贈与や定期贈与にみなされると節税効果が低くなる
暦年贈与は「必要に応じた贈与」となりますが、以下のように連年贈与や定期贈与とみなされた場合、贈与税の負担が大きくなる可能性があります。
・連年贈与:毎年同じ日付と金額で財産を渡す計画的な贈与
・定期贈与:贈与契約書で決定した金額の分割贈与
たとえば、もともと1000万円を贈与する予定だったところ、1回で渡すと贈与税がかかるので、課税を回避するために分割するケースがあるでしょう。しかし、連年贈与は当初予定していた贈与額、定期贈与は贈与契約書で決定した贈与額が課税対象となってしまい、暦年贈与のメリットが活かせなくなるので注意が必要です。
◎名義預金は相続財産にカウントされる
預金口座の名義と実質的な預金者が異なる預金を名義預金といいます。子供や孫名義の預金通帳を父母や祖父母が管理しており、名義人が自由に引き出して使えない状態であれば、子供や孫に贈与した財産とはいえません。
名義預金は実質的な預金者の財産となり、将来的には相続税の課税対象となるので注意しておきましょう。
◎相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される
相続開始前3年以内に行われた贈与については、相続財産にカウントする生前贈与加算のルールがあります。基礎控除110万円以下の贈与であっても相続税の課税対象になるので、贈与者の年齢や健康状態を考慮して贈与を行う必要があります。
なお、贈与分を相続財産に加算するのは法定相続人に限られており、孫や第三者に贈与した財産は対象外となっています。また、2024年1月以降は生前贈与加算期間が7年に延長されたので、暦年贈与の開始時期が遅くなると、節税効果も低くなってしまうので注意しなければなりません。
■暦年贈与は廃止される可能性があった
過去の税制改正の審議内容をみると、贈与税については相続時精算課税制度を主流の制度とし、暦年贈与を廃止しようとする動きがありました。2023年度税制改正大綱では、生前贈与加算を7年に延長しており、相続時精算課税制度にも110万円基礎控除を新設しています。
■まとめ
暦年贈与には年間110万円の基礎控除があり、時間をかければ高額な財産でも非課税贈与できるので、かなり使い勝手のよい制度といえるでしょう。
ただし、税務署に否認された贈与は相続財産に加算しなければならないため、必ず贈与契約書を作成するなど、贈与方法には十分注意しなければなりません。また、暦年贈与が廃止された場合、従来の考え方では相続税や贈与税の節税効果を期待できなくなるでしょう。